長い休館期間が開けて、今年度初めてのプレミアム講座を開催しました。51名の参加者が熱心に聴講しました。
休館期間中も学芸員の先生方は県内各地に出向いて出張講座を多く開催されており、今回はその中から会員の関心の高そうなテーマの一つを増補版として披露していただきました。今回の講師は県立文書館で清水家文書に接して研究を進めてこられた木村遼之学芸員です。
埼玉の三偉人と言われている塙保己一、渋沢栄一、荻野吟子ほどには一般に知られていないのですが、江戸後期から明治終り頃(1829~1910年)まで81年の激変の時代を駆け抜けた清水卯三郎という人物がテーマです。
羽生の名家に生まれ、周辺地域の豪農一族の文化的ネットワーク環境の中で育っており、当時の武士階層以外では極めて恵まれた環境にいたと言えるでしょう。幕末~明治維新という時代背景や江戸に隣接する埼玉の地域性も清水卯三郎の活躍を後押ししたようにみえます。
オランダ語、英語を学び、人との縁も積極的に活用してパリ万国博覧会に参加、その後、明治元年まで単身米国に渡るなど、まさに文明開化の世を先取りした行動をして、明治の日本に多くのものをもたらしています。活版印刷機、陶器着色法、西洋花火、歯科器材、洋書輸入など、商人としての活躍が実に幅広く、歴史の最前線にいた偉人といえます。事業発展という形で後世に直接繋がらなかった分野も多いので、現代での知名度が広がっていないのでしょうか。
プレミアム講座開始に先立って館からご挨拶をいただいた岡本副館長からは、現在開催中の特別展「縄文コードをひもとく」の観覧を勧められました。埼玉県の縄文土器の主だったものを集中的に展示した稀な機会でもあり、講座後には観覧者が続きました。(nimo)