真夏のまち歩きは大変と思いましたが、東京駅周辺なら大丈夫だろうと企画を開始して、調べてみると、このあたりには国会図書館や国会前公園の日本水準原点など思わぬ見学地が多くあることを再発見し、いつもと違う「まち歩き」になりました。まずは集合も午前9時半。これは国会図書館に10時に向かうためで、集まりが心配されましたが、21名が参加となりました。

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そろって受付に行き、なんとか全員見学できることになりました。国会図書館(本館)は国会の目の前にある巨大なビルで前川国男のデザインによる地上部分5階、地下4階の正方形の建物が本館です。すぐ横に新館があり、これも前川デザイン室設計で、こちらは地下8階までの巨大な書庫がつくられています。延面積は約72,900平方メートルと壮大ですが、それでも書籍・雑誌だけ1500万点以上という膨大な蔵書・資料の収納には到底十分ではないようで、関西にある分館で地下書庫が順次増設されているとのことです。

ここはほとんどのひとが初めての体験でやや緊張気味。担当の方から説明を受けたあと2つの班に分かれて館内を見学開始。見学者証を首に下げて入ったフロアには中央に大きなカウンターがあり周囲には数十台の端末画面があり、早くもかなりの利用者が端末に向かい合ってなにやら情報検索をしています。資料はすべてここで検索して閲覧や使用を申し込むことになっているので室内は非常に静寂です。館内はステンドグラスの仕切りなど重厚なデザインです。ここは無言で通り抜けて館内を一巡したあと本館に続いている新館に移動、吹き抜けのエンテランスには池田満寿夫柵の大作壁画が飾られたいました。ここで、いよいよ見学者は地下8階にある東京館最深部の書庫に案内されます。地下30メートルの部屋はエアコンなしでも涼しく地震にも強いとのこと。広大なフロア内には特製だという高さ2メートルほどのキャビネット(本棚)が隙間なく並び、係員がその中を歩いて資料を探し、専用のベルトコンベアに乗せています。それが地上の閲覧室に送られるそうで、ここも静かで清潔な雰囲気が伝わってきます。見学したのは専門新聞・雑誌などのコーナーで、幅の広い書棚には数多くの専門雑誌や業界別の専門新聞が製本されて整然としか大量に積まれています。背文字に書かれた実に多彩な紙誌名を眺めながら歩いていると、の空間の中にいかに膨大な情報―それはわれわれの生きた時代と世界そのものです―が保存され、今後(われわれ世代がなくなった後)も維持され続けていくかと思うとちょっと不思議な感じがしてきました。

ここで私は、20代のころに勤めていた専門会社で出していたある雑誌が「創刊50周年」(だと思いましたが)記念号を出すというので、その雑誌の編集担当者が国会図書館に行き創刊時代の雑誌を借りて写真を撮ることができ「感動した」という話をしていたのを思い出しました。自分の会社にも無くなっていた雑誌がきちんと保存され残されていたことに文化の継承性を感じたのだと思います。

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しかし働く人にとっては一日中地下にいるのは心理的には大変かもしれません。そのためかフロアの中心に非常用の階段を含んでビルの中心を貫く吹き抜け空間があり、その天井は曇りガラスながら太陽の光が差し込むようになっています。ここで休憩をとるのでしょうか。ちなみにここだけが写真撮影できますが図書館の中はまったく見えません。

担当の人がここにある資料の中から「日本最初の新聞」として保存してある『横浜毎日新聞』や『郵便報知』などを実際に見せてくれました。本当に明治初期の新聞です。見学終了後に質疑応答があり、1時間半以上の見学時間になりました。

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次の見学は国会議事堂前公園にある「日本水準原点」です。都心の中でもあまり人の行かない場所で、地理学の徒でもなければほとんど注目する人もないような隠れた施設ですが、日本全土の土地の高さ―標高点の基準になっている重要な場所なのです。日本水準原点は標準海面(日本では東京湾)からの高さですから、地殻の変動により上下します。最近では東日本地震(2011年)の影響で約2.4センチ下がり、大正時代の関東地震と合わせて、基準設置時より13センチ下がって、現在の標高は24.3900メートルとなっています。地殻変動の力がわかります。

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次は日比谷公園。渋沢栄一が設置を提案し、本多清六博士が設計した日本初の都市公園です。公園内の文化財や公園の役割はいうまでもありません。ここにきて数年後の大きな再開発が予想されていますが、この日は久しぶりの公園歩きを楽しみました。昼食休憩後、桜田門を経て祝田橋から丸の内のビル街へ移動。10年前の復元工以降も一帯周辺の開発が進んでいる「東京駅」と丸の内街は明治、大正、昭和の近代レトロ建築が集積している日本屈指の重厚な都市景観といえます。明治生命館ビル、第一生命ビル、三菱一号館美術館から東京駅へあるき、最後は大手町では有名な「平将門の首塚」に向かいました。

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読売新聞社本社のすぐ横ですが、近くのビジネスマンなどは意外に立ち寄らず、見学・参拝者(?)のほうが多いようです。ビルの谷間の不思議な空間はいまやそれなりの観光地ですが、数年前の開発のためか、あまりに整然としすぎていて、荒俣宏描くところの『帝都物語』冒頭のようなおどろおどろしい異世界感はほとんどありません。

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それより、一行には、そのすぐ手前、大手町駅ビルを隔てた場所にできた「大手町の森」のほうが新鮮な驚きがあったかもしれません。オフィス街に本物の自然を、ということで千葉県の山林で3年間経た植生を土壌ごと移転したそうで、10年以上経た今でも、ビルの谷間に不思議な景観をつくり出しています。
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