当館の学芸員さんからとっておきの話を披露していただき、会員限定で博物館に更に親しむ場を提供するプレミアム講座です。今年度も一回目を開催できました。春の特別展「東国の地獄極楽」で親しんだテーマの掘り下げを仏教美術史がご専門の西川真理子学芸員にお願いしたものです。遅い梅雨明けとともに急にやってきた猛暑の午後でしたが、45名が参加しました。
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地獄の見取り図で鳥瞰図的に地獄の風景を眺めるとともに、地下八階建ての地獄の構造と各階の地獄の意味に想像を巡らせます。鎌倉時代以降に定着したとされる十王信仰による地蔵十王経などに現されるように、源信の「往生要集」の世界から様々に肉付け展開されていく場面は、古くからの教えの時代的解釈と代々のご先祖様の想像力の反映でもあるのでしょう。お盆の時期でもあり、盂蘭盆会の起源である施餓鬼会の話もタイムリーでした。串刺しの母と目連尊者の姿に、救済を求める凡人もある種の安堵感が得られるのかなとも思いました。他方、六道の最上階とされる「天」も永遠には続かないという意味で、未来への不安を抱えている苦しみの世界とさえ見えるのではないでしょうか。
人の心の中の欲動を地獄の風景画で表現する手法は、近世の絵師歌川豊国が山東京伝の「本朝酔菩提全伝」の挿図として描いているように、長く受け継がれています。
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講師の西川さんから参考図書として、加須屋誠著「地獄めぐり」(講談社現代新書)を紹介されました。講師のお話の大きな部分に影響を与えている好著です。毎回参加者からご回答いただくアンケートは講師にも回覧して反響をお伝えしています。時間的に足りないとのご意見を毎回いただきつつも、興味深くお話を伺えて充実した一時間になりました。(nimo)
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